昨年の製作事例にはなりますが、
お客様とのやり取りの記録や、製作過程が残っておりましたのでエピソードをまとめました。
フルオーダーで『ビジネストートバッグ』の製作ご依頼を頂きました。
お客様は他社製品のバッグをお使いになられていて、革の柔らかさが特徴的なバッグでした。
見た目やサイズ感は良いのですが、柔らかい為、自立しにくい事。
中に収納したアイテムは重力にあわせて下に溜まってしまう事。
バッグの中が整理しにくい状況も気になっていらっしゃいました。
そのストレスを解消させる事をご要望されていました。
自立して、中の収納もポケットを充実させて整理できるように。
ビジネスバッグですが、カッチリし過ぎない。
トートバッグの様な少しカジュアルな要素も欲しい。
ひと通りご要望を伺い、まずはリクエストを網羅した実寸大サンプルをお作りしました。
サンプルを作るにあたり、本番さながらに型紙を起こします。
柔らかなカジュアル感の要素はマチで表現することに。
マチの構造を探り、サイズ出しには時間をかけました。
時間をかけて挑戦した甲斐があり、自然なカーブを描く外折れマチが実現できました。
サンプルがある程度まで出来上がってくると、何となく見た目に物足りなさを感じました。
その状況をお客様に写真にてご案内させて頂きますと、同じように感じて下さいました。
予想していたより も カチッとしている ・のっぺりしている と、
ご指摘を頂きました。
では、装飾パーツもご提案させて頂こうと、最終サンプルには色々装飾パーツを配置してみました。
再度、ご来店頂き実寸大サンプルをご確認頂きますと、
想像されていたよりもサイズが大きく感じたそうです。
仕上がりの高さを少し低くして、マチのサイズも修正となりました。
型紙を見直すことにはなりましたが、サンプルをご確認頂く段取りを踏むことで、
より理想に近いバッグをお届けすることができます。
他にもご指摘頂いたことのひとつとして、
上口のファスナーの両端の隙間を無くして欲しい。ということでした。
ファスナーを全開にすることはあまり多くないということで、
開き易さよりも、隙間をできるだけ無くす構造を探りました。
このファスナー周りの構造については、
バッグ本体がカタチになってきてもギリギリまで悩みました。
両端を変形させたラインを導き出し、今回はこの配置の仕方にさせて頂きました。
内装のポケットは充実しております。
中央にファスナーの仕切りを境にして、メイン収納を2つのお部屋に分けます。
パソコン等サイズが大きいものや、その時必要なアイテムを収納するスペースが1つ。
フリーな用途でお使い頂くスペースです。
壁面にはファスナーポケットを配置いたします。
もう1つのスペースはお財布・名刺入れ・手帳・ボールペン等、
いつも持ち歩かれるアイテムの専用ポケットを集約して配置いたします。
ポケットの並び順についても、全てご指定頂いておりました。
フルオーダーだからこそ、
お客様の使い勝手を重視したバッグをお作りすることが出来ます。
お打ち合わせからスタートして、
まずはご要望をサンプルとしてカタチにして、
そして、作り上げる事ができました。
お客様にもご意見を伺い、ご一緒に向き合って下さり感謝いたします。
出来上がってみると、
サンプルの段階に比べるとバランスよくまとまったと感じます。
お客様の感性と的確なご指示を頂けたお蔭で、ここまで作り上げることができました。
外縫いで仕上げておりますが、
カッチリとなり過ぎないようにマチが良い表情をプラスしております。
バッグの見た目として、表と裏で印象を変えております。
シンプルな裏面は、シンプルなコーディネートを想定してスッキリさせております。
その時のシーンに合わせて、裏か表どちらかを見られる側として使い分けるそうです。
出来上がり後、発送でのお渡しとなりましたが、
お客様より嬉しいリアクションを頂きました。
作り手である自分達の事を想って下さったお心遣いが本当に嬉しかったです。