「自分が納得した素材を使用して、お客様の為に鞄を製作したい。」
そんな姿勢で始めた、鞄のアトリエですが、
時々、「切れ端の革でいいから安く仕立てて欲しい」とか、
お客様自身で素材を持ち込まれて、「鞄を仕立てて欲しい」という依頼があります。
しかし、こちらがお客様の為に責任を持ってお作りする鞄というものは、
切れ端の革で満足のいく鞄が出来上がるのか…
お客様が持ち込まれた素材を使って仕立てたものに、自分は保障できるのか…
なかなか難しいところもあり、
通常、お客様が持ちこんで頂いた素材でのオーダーはお受けしておりません。
しかし今回、お客様とお話をうかがっていくなかで、
お客様の姿勢に共感し心動かされ、今回は特別にお客様が持ち込まれた素材を使用した、
製品の製作に取り組ませていただきました。
オーダーのご依頼主の方は社会人のバレーボールチームに所属して活動しており、
使わなくなったバレーボールを素材として生かして、
何か記念品として製作できないかというご依頼内容でした。
ご依頼主のチームにかける思いや、仲間をねぎらう気持ちにとても共感でき、
取り組ませていただくこととなりました。
まずはご依頼主様と、どの様なアイテムが良いか色々話し合った結果、
バレーボールの形状を出来るだけ生かした、ペンケースを製作することになりました。
ネットに当たったバレーボールの傷も、仲間との思い出。
ペンケースを製作するにあたり、出来るだけバレーボールの名残が残るような、
そんな仕立て方を色々、模索しました。
私がバレーボールという素材に、加工の工程が増えれば増えるほど、
原型とは離れていくと思い、バレーボールの球体を生かしたパターンを探りながら、
今回のペンケースの製作を進めていきました。
出来るだけバレーボールの形をいじらずに、縫製も出来るだけ控えて、
縫い代も極力控えたかったので、手縫いでクロスステッチの縫製を。
口元にはまず、一度、コバ塗りをしましたが、美しい仕上がりにいかなかったので、
手持ちの革を使用して控えめに、口元をへり巻きしました。
ファスナーのツマミには赤と緑の革を二枚貼り合わせ、
ボールを意識した円形状のツマミを施しました。
赤と緑は、ご依頼主のチームのチームカラーでもありますし、
ボールにも使われている色なので、赤と緑の革を選択してみました。
ペンケースの中央には、ボールのロゴをワンポイントに配置しました。
このロゴですが、ボールから円形通りに切り抜くことが意外と大変でした。
相手がゴムで粘りっこいし、なおかつボールは何層も貼り合わされていましたので、
切り抜く際には、伸び縮みが激しく苦労しました。
けれど、ご依頼主にお渡しした際にはとても喜んでいただき、
苦労した甲斐があったと、ホッとしながら、また次の製作に向け頑張り甲斐があるものです。
インタビュー:エスぺディエンテ かづみ
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