メンズ『ビジネスバッグ』
オーダー種類 | フルオーダー |
使用皮革 | アリゾナ・ブライドルレーシングレザー |
サイズ | お問い合わせください |
12月ももうすぐ半ば。
今年も残り、数えられるばかりとなりました。
2021年のエスペディエンテを振り返ったら、
思い出深いご依頼品になるであろう…
メンズ『ビジネスバッグ』のフルオーダー、
ふたつのバッグの製作エピソードです。
まずは、
イタリア由来のタンニンレザー「アリゾナ」のターコイズ色を使用した、
『ビジネストートバッグ』から…。
お客様が普段、お使いになられているトートバッグを元に、
お色違いでお願いします! …という、ご希望を頂きまして、
お作りさせて頂きました。
【全体のフォルムとサイズは、忠実に再現し…】
例えば…
バッグ全体のバランスは、普段あまりやらないバランス感。
持ち手の根革の間隔は広く、その分ポケットが配置されている事や、
ファスナーマチのつけ方が新鮮でした。
【細かなパーツはエスペディエンテの仕立てで、取り組ませて頂きました。】
例えば…
持ち手の「根革」は、切り目じゃなくて、ヘリ返しにして。
ファスナーの「ツマミ」には、肉盛りさせて、見た目も良くなるし、
開け閉めして酷使されるパーツですので、コシも上がり変形しにくくなります。
そんな辺りを、いかにもアピールするわけでは無く、
さり気ない程度に施しております。
【お使いになられていたバッグに無かった要素。】
唯一リクエスト頂いておりましたのが、
内装のファスナーポケットについて。
ファスナーの窓枠にペン2本分の空間を空けて、ファスナーを配置する事。
もう片方の壁面のファスナーポケットには、タブレットを収納されるという事で
タブレットが出し入れし易い広さの間口を確保しております。
今回の『ビジネストートバッグ』では、
普段あまりしていなかった、
タンニンレザーと真鍮金具の組み合わせ。と、
口元のオープンファスナーのつけ方の構造。
取り組ませて頂けることで、次に生かしていける!
ご提案の引き出しが増えました!
同素材でお色違いの「アリゾナ」を使用した
ビジネスバッグ『内縫いブリーフ』のブログ記事はコチラ ≫≫≫
そして、もうひとつのフルオーダーご依頼は…
新たな型紙を起こし、実寸大サンプルを作り、
革素材探しからスタートいたしました、
イギリス由来のブライドル「レーシングレザー」の
チョコ色を使用した『ビジネスバッグ』です。
硬いブライドルレザーの大型鞄でしたので、
大半の縫製が手縫いでの製作となりました。
製作について振り返ると…
最後の工程となる、仕切りファスナーを縫い上げることは大変でした。
ファスナーの付け根とマチが縫われるところが苦戦しました。
ボディを突っ張らせるファスナーですが、ボディの革がカーブせずに、
戻ろうと跳ね返るので、大変でした。
その苦戦の甲斐あってか、マチは綺麗に仕上がりました。
【難しかったけれど、美しい表情となったマチがこの鞄の特徴となりました。】
鞄のボディ両側のバランスが悪いと、マチはいびつになりシワになる。
ファスナー仕切りで突っ張られる、均等な力のバランス。
正確な作業が影響してきます。
柔らかい革なら、多少ボディをつぶしながら縫い易い位置で縫えますが、
革が硬いので無理な力をかけて、へんな跡を残すことは出来ませんし、
最後の工程となるので、すでに立体になっている状況の中、
革のハリで跳ね返りもあるので、苦戦しました。
持ち手を縫うのも想定していた通りにはいかず…。
硬い革だから、綺麗なアーチになりにくいし
スムースレザーなので、シワが入りやすく目立つので、
より良い仕上がりを目指し時間がかかりました。
そんな苦戦した製作でしたが、
お客様からの鞄の仕上がりイメージとして、
ご愛用頂いている名刺入れの構造を落とし込むことでした。
名刺入れは「2室の外折れマチの構造」でして、
ボディからつながるマチを外折れっぽくして、
名刺入れの二層式を意識しました。
ファスナーの仕切りを配置して突っ張ることで、
マチが外にはみ出て二層式の雰囲気に。
お客様がお使いになられている
2室の外折れマチ構造の『名刺入れ』ブログ記事はコチラ ≫≫≫
ファスナー仕切りの収納スペースには、パソコンを収納されるということで、
お客様がお使いになるスタイルに合わせて、
底にはクッション性の芯材を仕込んでおります。
内装のポケットは、細々としたものを収納されるという事で、
両側に3連のポケットを配置しております。
この3連ポケットもお客様のご希望で、真ん中だけ若干大きなサイズにしてあります。
(写真からでは、伝わりづらいですが…)
初めてのブライドルレザーを使ってのご依頼でしたが、
トートバッグっぽい雰囲気に仕上げて欲しい!
…というご希望も当初から頂いておりました。
硬い革のブライドルですから内縫いは出来ないので、
革のエッジ、コバを出来るだけ隠しました。
表に見せない、目立出せないことで、
外縫いだけど、内縫いの曲面を出せるように心掛けました。
内縫いのような曲面を感じられるように、マチと胴は切り分けず一体型に。
革のしなやかさを感じられる輪郭となるように。
持ち手はピンっと立たせる事で、凛々しさを演出しております。
金具を配置して、持ち手がパタパタ倒れるイメージよりも、
常に持ち手が立っていて、鞄を持ち上げる時にもスッと持ち上げられて、
スッと立てる方がスマートで、お客様にはお似合いかと。
長文となりましたが、長文にしてお伝えしたい程に、
長期戦で取り組ませて頂きました。
トートの要素がありつつも品格もある、
これまでにない鞄。全力を尽くさせて頂きました。
ご依頼下さったお客様にも、本当にお似合いでしたし、
出来上がりお渡しした際には、
早速にもお客様はひと通りのアイテムを収納してくださり、
ちゃんと全て収まりました。ホッと安心。良かったです!
お客様と共に、目指す鞄を生み出せたのかなと…。
ありがとうございました!
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