









『フォーマルバッグ』
オーダー種類 | カスタムオーダー |
使用皮革 | クリスペルカーフ |
サイズ | W25㎝×H18.5㎝×D9.5㎝ (持ち手H9.5㎝) |
昨年末から今年にかけて製作に取り組んでいた『フォーマルバッグ』。
年末年始の比較的静かな時間を使って、
製作に集中することが出来て良かったです。
良かった内容は色々あって…
いつも通りに鞄作りをする。
リズムが変わらない生活をしていたので、体調を崩さなかったこと。
そして、『フォーマルバッグ』の製作について想定以上に難航したことでした。

一昨年お作りさせて頂いたフルオーダーの『フォーマルバッグ』
一昨年、お作りさせて頂いた『フォーマルバッグ』
その画像をご覧になり、エスペディエンテにご来店下さったご遠方からのお客様。
一昨年のフルオーダー『フォーマルバッグ』ブログ記事は コチラ≫≫≫
「2つマチ」だったバッグですが、ご自分は「1つマチ」で欲しいのです。
そして、使用する革素材も同じ「クリスペルカーフ」でお願いいたします!
との事で、まさか! でした。

クリスペルカーフ 革色ブラック
クリスペルカーフを使ったフォーマルバッグをお作りさせて頂く事。
もうそんなご依頼は二度とないと思っていたので、
ありがとうございます!という気持ちと、とても驚きがございました。
そして、そもそもクリスペルカーフが手に入るか少々不安もありました。
問屋さんの入荷状況の把握はできていないし、
入手できたとしても、仕立て上げる事がとても難しい革。
一瞬、正直複雑な心境でしたが、またあのバッグに挑戦できるのか!と、
お客様の決意とご期待を託され、覚悟と緊張感でした。
まずは、仕上がりイメージをご確認頂く為に、
紙と革を組み合わせての、サンプルをお作りしてご覧頂きました。
この『フォーマルバッグ』はマチ基準のバッグです。
マチが基準になって捨てマチがついて、ボディ胴版のサイズが導き出されます。
今回は、マチを「1つマチ」に変更するご依頼です。
マチ基準ではあるのに、ボディのサイズは変更しないので、
ボディにマチを合わせていくという、逆工程でした。
辻褄を合わせる為に微調整を加えながら作る。
それを探る紙サンプルでした。
マチのサイズは、紙サンプルの段階で3回ほどアプローチしましたが、
印象的には、紙サンプルまでは順調でした。
苦戦をしたのは、ハンドルでした。
お打ち合わせの当初から、ハンドルは短めをご希望されておりました。
仕上がりイメージを形にした紙でのサンプルをご覧頂きましたら、
「まず、第一印象で現状よりも持ち手をもう少し短く。1㎝程短くして欲しいと思った」と、お伝え下さいました。
1㎝高さを低くして欲しい。と伺い、
改めて高さを低くさせたハンドルのサンプルを作りご覧頂き、ご納得頂けました。
そして、いよいよ本番です。
苦戦は、ここからです。
実は…本番のハンドルは5本作りました。
革が硬いので、本当に苦戦しました。
最初に作ったハンドルは、出来上がりは悪くなかったのですが、華奢でした。
もう少しボリュームを持たせようと作りなおしていたら、ドツボにはまった…。
2本目、3本目、4本目、全てやり方を変えながら作りましたが、
かまぼこ芯に表革が馴染まなくて、仕上がりがいびつでした。
ようやく5本目、組み立てる順番を変えてきれいな形になったハンドル!
その後やっと、バッグのボディの製作に取りかかりました。
長く向き合った『フォーマルバッグ』です。
革がパンッと張っているバッグの表情は、上品に見えます。
無駄なシワは出したくない。
パンと張った張りつめた革の雰囲気が、
このボックスカーフが活きるのではないかと思っています。
それを実現しようとすると、
革がこたえてくれるギリギリで貼り込んでいかないといけません。
無理な屈折とか、革の部位よっても硬さが違うので汲み取りながら、
ギリギリに耐えてくれる側と、反対に耐えられない側も見極めないといけません。
耐えられない部位に合わせると、
綺麗に均等に形作ろうとしても傾くしシワが入ります。
そんな革のギリギリを探りながら製作を進めました。
そして、このフォーマルバッグは陰影を出して立体感を出したかった。
これも上品に感じられると自分は思うからです。
厚みの薄いクリスペルカーフを使用しておりますが、
バッグを見る角度によってボリュームを感じられる表情。
硬い革だけれど、しなやかに見える質感。
それをこのフォーマルバッグで出したかった。
素直に平たい切り目の鞄を作れば割と難しいことはないですが、
難しくさせちゃったのは、この立体感を出す事。
光の当たり方によって陰影ができる表情。良くできたと思います。
この立体感があるとないとでは、このバッグの迫力がだいぶ変わってきます。
製作を振り返って…
「日常的に便利に使う」という位置付けのバッグでは無いかもしれませんが、
ここぞ!!という時に持つことで、
気分が高揚し活躍してもらえたら良いなぁ…と思いながら製作しました。
さらにバッグを置いて佇んでいる姿にも
ときめいてもらえる様、色々工夫を凝らしました。
お洒落してお食事に出かけた際にふとバッグを見たら、
「あら素敵ね~」と感じて頂ける瞬間等、
お客様がバッグをお使いになっているシーンを想像しながら製作いたしました。
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